バイクのオーバーホールとは?自分でできる?必要な時期や費用の目安を徹底解説

バイクのオーバーホールとは?
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バイクの「オーバーホール」とは分解メンテナンス・分解点検のことです。特にサーキット走行を行うレースマシンでは、オーバーホールがレース後に毎回行われるなど、頻繁に行われている作業でもあります。
オーバーホールとは分解点検のこと
バイクのオーバーホールとは、形になって組み上がっているものを一度分解し、点検や各部品の交換を行う分解メンテナンスのことで、新品状態に戻すための作業です。
主にエンジンやフロントフォーク、ブレーキ回り(キャリパーなど)がオーバーホールされるほか、旧車ではキャブレターなど、様々なものがオーバーホールの対象です。
キャブレター車は現在では主流ではなくなり、フロントフォークやブレーキ回りのオーバーホールもそれほど一般的ではないため、この記事ではエンジンのオーバーホールに特化して解説していきます。
オーバーホールの目的
オーバーホールを行う目的は、新品のコンディションを取り戻すことです。
エンジンを例に挙げると、エンジンを構成する部品単位まで分解し、摩耗など劣化が進んでいる部品は新品に交換、カーボンなどの汚れを洗浄して除去して新品のような状態に戻します。
目的は新品の状態に戻すことですので、単にエンジンを分解し組み立てただけではオーバーホールとは呼びません。
エンジンのオーバーホールの時期は?
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エンジンのオーバーホールとは、エンジンを部品単位まで分解し、点検や部品交換、洗浄を行って新品状態に戻す作業のことですが、オーバーホールを行う目安はあるのでしょうか。
エンジンが焼付いた場合はオーバーホールをしないと走れるようになりませんので、即オーバーホール対象となりますが、ほかにもオーバーホールの目安となる走行距離があります。
走行距離の目安は何キロ?
バイクエンジンのオーバーホールは、2ストか4ストかによっても異なり、2ストは1万Km前後、4ストエンジンなら10万~15Kmがオーバーホールの目安になります。
環境への配慮などから、日本では2ストの新車販売が行われていませんが、(イタリア車では2022年に新車販売されています)4ストより2ストの方がエンジンの構造上、早めのオーバーホールが必要です。
乗り続けていると気づきにくいですが、距離や年数を経ると除々にエンジンパワーが落ちたり、レスポンスが落ちたりしており、オーバーホールをすることでキビキビとした走りが取り戻せます。
目安になる症状について
乗っていて特に不調を感じない場合は、基本的にオーバーホールの必要がありませんが、以下のような症状が現れた場合は、オーバーホールを検討したほうがよいでしょう。
• エンジンから異音がするようになった
• 加速やパワーが出なくなった
• オイル漏れが激しい
• タペット音がする
• 発進時や低速時、アイドリング時などにエンストしやすくなった
• マフラーから白煙が出る
• エンジンが焼き付いた
これらの症状が出た場合、最悪オーバーホールが必要となりますが、多くの場合は点検やちょっとした修理で症状がおさまることもあります。
エンジンに違和感を覚えたら、まずが信頼のおけるバイクショップで点検や相談を行うとよいでしょう。
エンジンのオーバーホール「腰上」「腰下」「フル」の違い
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一概にエンジンのオーバーホールと言っても、作業を行う範囲によって「腰上」「腰下」「フル」と様々な種類があります。
それぞれが何を意味するオーバーホールなのかを解説していきますので、参考にしてみてください。
腰上
エンジンの腰上とは、シリンダー側(エンジン上側)とクランク側(下側)を分割して呼ぶ名称で、シリンダー側を腰上と言います。
腰上オーバーホールは具体的には、シリンダーやシリンダーヘッド、ピストンにピストンリング(腰下に入る場合も)、カムシャフトやバルブ周辺のオーバーホールです。
腰下
エンジンの腰下はクランク周辺のことで、クランク周辺やミッションが該当し、コンロッドにピストンまでを含めることもあります。
腰下のオーバーホールはエンジンを降ろした上で、クランクを割る(開封する)必要があるため、エンジンを乗せたままオーバーホールできることが多い腰上より費用が高めです。
フル(オーバーホール)
フル(オーバーホール)とは、腰上と腰下の区別なくエンジン全体のことです。
通常は腰下のオーバーホールは腰上も含むことが多いことから、腰下のオーバーホールと言えばフルに該当することもあります。
似た言葉に「フル・レストア」がありますが、分解して新品のような「性能を取り戻すのが目的のオーバーホール」に対し、フル・レストアは見た目も含めバイク全体を新車時のように原状復帰させることを指す言葉です。
エンジンのオーバーホールにかかる費用の目安
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オーバーホールの費用は作業を行う範囲やエンジンの形式、車種などによって異なりますが、おおよその目安をエンジン型式ごとにまとめてみましたので、オーバーホールを考えている方は参考にしてみてください。
単気筒
ピストンが1つだけの単気筒エンジンをオーバーホールした場合、腰上のオーバーホールで8万~15万前後、腰下では10万~25万程度が目安です。
フルオーバーホールでは、15万~30万前後の費用となり、車種やカウルの有無など作業時間や交換部品点数に比例して費用も変わります。
2気筒
2気筒エンジンのオーバーホール費用は、腰上で10万~20万前後、腰下では12万~30万、フルオーバーホールでは12万~35万前後です。
ピストンやシリンダーが単気筒の倍あるため、単気筒のオーバーホールよりも作業時間や部品点数が多くなり、その分費用に反映されます。
4気筒
4気筒エンジンのオーバーホール費用は腰上で15万~30万前後、腰下で20万~40万前後、フルで30万~50万前後です。
オーバーホールをする範囲や車種、排気量によっても費用が異なり、気筒数が増えることで作業時間や交換部品点数も多くなる傾向にあります。
作業工賃は一般的に6,500円~8,500円/時間程度となっており、エンジンを降ろしたり、分解や組み立てに時間がかかったりするバイクほど作業時間も伸びるため、費用も高いです。
旧車
手塩にかけたバイクを売るのは悲Cね😭
作った2台売りに出すのが気が引ける…Kawasaki ゼファー750 Z2仕様https://t.co/UrnVbRxUln
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— S.P.M.C工場長(とろいんぷ) (@toro_spmc) April 27, 2023
旧車の場合、車種によってオーバーホールの費用はまちまちで、中には部品が廃盤となっているため、まずはバイクショップなどで相談をする必要があります。
中古エンジンの載せ替えなども検討できますが、タマ数の少ないバイクの場合はオーバーホールを終えるまでに数ヶ月を要することも。
費用は車種によって大きく異なりますので、まずはオーバーホールが可能かどうか、費用は幾らくらいになるのかをバイクショップに相談してみるとよいでしょう。
2スト
2ストエンジンのオーバーホールも、旧車同様に絶版となっている部品もあり、車種によってオーバーホールの費用や日数が異なります。
特に大人気を博したレーサーレプリカのNSRやTZRなどは、入手が年々困難になっていく希少性から、プレミアム価格で市場に出回っているため、代替えエンジンも見つかりにくい傾向です。
まずは、信頼のおけるバイクショップでオーバーホールが可能なのか、費用は幾らくらいになるのか見積もりを取るなど、相談をしてみましょう。
エンジンのオーバーホール費用をおさえるためのコツ
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バイクエンジンのオーバーホール費用をおさえるためのコツについて、日頃からできる心構えと、オーバーホールが必要になった場合に、費用を抑える方法について解説していきます。
エンジンのオーバーホール費用を抑えるには、日常からオイル交換などのメンテナンスをしっかり行うなど、エンジンを大切に扱っていくことが肝要です。
日頃のメンテナンス
日頃から点検やオイル交換などのメンテナンスをしっかり行っておくことで、エンジンの状態を良好に保てますし、異常の発見も早くなります。
異常が出ているのに気づかないまま長期間乗っていると、不具合の症状が悪化したり修理する範囲が広がったりするなど、オーバーホールや修理の費用も高くなりやすいです。
不具合が出たらできるだけ早く対処する
エンジンに不具合が出たら、できるだけ早く点検や修理に出すなど対処を行いましょう。
ありがちな不具合に、異音がするようになった、急激にパワーが出なくなった、激しいオイル漏れなどがあります。
不具合が出たまま走行を続けていると、より症状が悪化したり最悪の場合は故障して動かなくなったりすることもあり、修理やオーバーホール費用も高くなりますので、早めの対応が必要です。
バイクに負担がかかるような無茶な運転をしない
バイクに負担がかかるような、急のつく運転(急発信、急加速、急制動など)をできるだけ控えて走ることで、エンジンの寿命も伸びます。
また、エンジンに負担の少ない安定した走行を心がけることで燃費の向上も期待できますので、積もり積もってお財布にも優しいです。
無茶な運転は転倒や自動車との事故の危険性も高まり、バイクが壊れる原因にもつながりますし体もダメージを受けるので、丁寧な運転を意識し無茶な運転は避けましょう。
できるだけ毎日乗るようにする
バイクは乗らずに保管するよりも、身近な距離であっても毎日乗るほうが長持ちします。
冬場など気温が低い日や雪などでバイクに乗れない期間は、できるだけエンジンをかけることで、エンジンのコンディションやバッテリーを保つことができますので、最低でも週に1、2回はエンジンをかけるようにしましょう。
オーバーホール費用を抑えるコツ
オーバーホールは、腰上で10万~20万程度、腰下やフルオーバーホールになると20万~50万程度の費用がかかり、リビルト品(再生品)のエンジンを載せ替えるほうが安くつくことがあります。
車種によってはリビルトエンジンがないこともありますが、少しでも費用を抑えたい場合は、バイクショップに相談してみるとよいでしょう。
エンジンのオーバーホールは自分でできる?
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エンジンのオーバーホールは、工具と知識や作業スペースがあれば自分で行うことも可能です。
しかし、一度分解して組み直すので、手順などを誤ると元の状態に戻せなくなったり、ネジなどが余ったりするので、少しでも自信がない場合はプロに依頼しましょう。
エンジンのオーバーホールに必要な工具
バイクのエンジンをオーバーホールするにあたり、さまざまな工具やウエスなどが必要となります。
一般的なオーバーホールで必要な工具類を以下にまとめてみましたので、参考にしてみてください。
トルクレンチ(5~150 N・m程度) | サービスマニュアル規定の数値で使用 |
---|---|
バルブコンプレッサー | バルブ取り外し用 |
インパクトドライバー | 電動工具 |
マグネットドライバー | ネジ類の滑落防止 |
シックネスゲージ | バルブクリアランスの調整用 |
ノギス | 寸法測定に |
リューター | バリ取りなどに |
グラインダー | カーボン除去に |
ラジオペンチ | 様々な場所に使用 |
タペットアジャストレンチ | タペットの隙間調整(OHCエンジン車) |
ロックナットレンチ | プライマリードライブギヤに |
これらの工具を一から揃えると10万前後~、プロが使うような高級工具で揃えると50万前後が工具代として必要です。
サービスマニュアル | 内容に従い作業を進める |
---|---|
ウエス | パーツや作業周辺の拭き取りに |
廃ガソリン(適量・取り扱い注意) | パーツの洗浄に使います |
パーツ入れ | 複数個あるとパーツ単位で分けられます |
リチウムグリス | Oリングなどに使用 |
パーツクリーナー | パーツの洗浄に |
モリブデングリス | マニュアルに従い塗布 |
廃油缶 | エンジンオイルの受けに |
エンジン台 | 下ろしたエンジンを乗せる |
チャック付き袋 | ビスなどの保管・記入できるもの |
車種により、エンジンのオーバーホールに必要な工具が異なります。
エンジンオーバーホールの手順
サービスマニュアルにオーバーホールの手順が記載されていますので、マニュアルに従ってエンジンのオーバーホールを進めていきます。
マニュアルを見てもわからない場合や自信がない場合は、バイクショップなどプロに依頼した方が無難です。
万が一、分解して元に戻らない、部品が破損したなどの事態が起きても責任は取れませんので、作業は自己責任・自己判断のもと行ってください。
手順1.外装の取り外し
まずはカウルやガソリンタンクなどを取り外し、エンジンを取り出せる状態にします。
取り外した際のネジなどをなくさないよう、蓋のある箱かジップロックなどに入れて密封し、後で分からなくならないよう、どの部位の部品なのかを記載しておきましょう。
手順2.車体からエンジンを取り外す
エンジンオイルやクーラントを抜き、配線やホース類などを取り外しながらバイクからエンジンを降ろします。
配線やホース類がどこと接続されているのかわかるよう、スマホなどで画像を残しながら作業を進めていくと安心です。
手順3.シリンダーの取り外し
エンジンが降ろせたらシリンダーを取り外し、ピストンやコンロッドなどを分解していきます。
分解できたら各部品をチェックし、傷などの状況によっては新品への交換が必要になり、交換が不との判断なら廃ガソリンやクリーナーを使って洗浄していきましょう。
手順4.クランクを割る
クランクを割り、シリンダー周辺と同じように分解して各部品を確認し、必要に応じて交換を行います。
交換が必要ない部品は、廃ガソリンやクリーナーなどで洗浄をしていきますが、特に廃ガソリンは取り扱いに注意が必要で、換気をしながら作業を進めます。
もし洗浄中に気分が悪くなる、頭がクラクラするなど異変を感じたら、即刻作業を停止して新鮮な空気を吸うなどして、体調の様子を見ましょう。
手順5.分解の逆手順でエンジンを組み立て
交換が必要な部品の交換や洗浄が終わったら、分解した手順の逆手順で、エンジンを組み立て、バイクに搭載していきます。
画像に残しながら作業を進めている場合は、サービスマニュアルと画像の両方を確認しながら、慎重に組み込んでいきましょう。
手順6.作業の確認・エンジン始動の確認
エンジンの搭載が終わったら、作業に漏れがないか余っている部品やネジなどがないかを確認し、配線やホース類、ガソリンタンクなどを取り付けます。
取り付けが終わったら、エンジンがかかるかどうかを確認し、まずは低速で慎重に走行をしましょう。
まとめ
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バイクのエンジンオーバーホールについて、オーバーホールとはどんな作業なのかという基本的なことから、かかる費用の目安、手順について解説してきました。
知識やサービスマニュアルがあれば個人でもオーバーホールは可能ですが、必要工具の点数も多く、事前準備が必要です。
自分でオーバーホールすることに少しでも自信がない場合は、バイクショップなどプロに任せたほうが無難なので、自分の知識とサービスマニュアルの理解度に応じて判断するとよいでしょう。
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