フロントフォークにできる錆びの種類
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バイクは多くが金属で構成されており、さらに雨風の影響を大きく受けるので、錆が発生しやすいです。
フロントフォークも、ほとんどが金属でできているため錆が発生しやすいですが、フロントフォークの錆には点錆と赤錆があります。
点錆
点錆とは直径が1mm前後の細かな斑点状の錆で、クロームメッキ加工が施されたフロントフォークのインナーチューブに発生しやすい錆です。
クロームメッキには目に見えない微細な穴が空いており、赤錆はクロームメッキの穴から発生します。
点錆は大量発生することも多く、放置したままにしておくと、錆の範囲が広がり赤錆へと発展することも多いです。
赤錆
赤錆は赤茶色をした錆で、おもに鉄が腐食して発生する錆で、細かな点錆も長く放置すると赤錆へと発展します。
フロントフォークのインナーチューブは素地の鉄にニッケルメッキ、さらにその上にクロームメッキが施されていますが、素地である鉄で発生した錆が上の層へと移っていき、やがて表面にでてくる錆です。
点錆が現れてきたらそのまま放置せず、錆落としなどで処置を施すと赤錆にまで発展せずに済みます。
フロントフォークにできた錆を放置するとどうなる?
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フロントフォークに錆が発生した場合、そのまま放置しておくと次のような段階へと移っていく事があります。
- 点錆が赤錆へ
- オイルシールに傷が入る
- オイル漏れを起こす
順番に詳しく解説していきます。
点錆が赤錆に
フロントフォークのインナーチューブは微細な点錆が発生しやすく、点錆を放置するとより大きくまとまって赤錆となります。
フロントフォークのクロームメッキは一見、錆ないようにも思えるかも知れませんが、クロームメッキの表面には無数の細かな穴が空いており、その穴から水やホコリなどが侵入し、中に錆を発生することも。
クロームメッキ下で発生した錆がやがてクロームメッキの穴から表面に現れ、点錆となって確認でき、点錆を放置したままにしておくと、やがて赤錆へと発展します。
オイルシールに傷が入る
錆の発生により表面に細かな凹凸ができ、フロントフォークがストロークした際に凹凸がオイルシールに当たって傷をつけることがあります。
オイルシールはインナーチューブ内のオイルを密閉する役割があり、錆が大きくなるとオイルシールを傷つけ、ときにオイル漏れにつながることも。
オイル漏れを起こす
大きな錆に発展した場合に起こりやすいですが、フロントフォークがストロークする際にオイルシールを傷つけ、穴が空いたり引っ張られたりしてオイル漏れを起こすことがあります。
オイルシールの破損によるオイル漏れは、オイルシールを交換する必要があり、オイル漏れや錆の状態が酷いと、フロントフォークのオーバーホール(分解しての点検・部品交換)が必要です。
フロントフォークのオーバーホールをショップに依頼した場合の費用目安は、正立式フロントフォークは24,000円前後から、倒立式では26,000円前後からで、カートリッチ式だとさらに5,000円ほど追加となります。
フロントフォークにできた錆・点錆の落とし方
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フロントフォークの錆を落とす手順は、主に以下の通りです。
- 大まかに錆を落とす
- スチールウールで磨く
- 耐水ペーパーで磨く
- コンパウンド等研磨剤を使う
- 防錆処置を行う
どの錆落とし手順もオイルシールまで磨いたり、薬剤がかかったりしないよう注意しながら、状況に応じてシール部分をマスキングするなど保護作業も必要です。
手順1.大まかに錆を落とす
まずは落とせる範囲で、スクレイパーなどを使って大まかに錆を落とします。
この時、素地に傷がはいらないよう、無理に錆を落とそうとしたり、力を入れてこすり過ぎたりしないよう注意が必要です。
大まかに錆が落とせたら、シール近くに錆が発生している場合は、シールにマスキングテープで養生するなどして、この後の錆取り処置がシールにまで及ばないようにします。
手順2.スチールウールで磨く
大まかに錆が落とせたら、スチールウールを使って浮いている錆を落としていきます。
スチールウールは手で握るようにして使用するので力を入れにくいことがあり、その場合は取手の付いた真ちゅうブラシの方が使いやすいケースも。
どちらかまたは両方を使い分け、錆が発生した位置に合わせて使いやすい方で、フロントフォークに浮いた錆を落としていきますが、縦方向ではなく横方向に向かって磨き落としていきます。
手順3.耐水ペーパーで磨く
耐水ペーパーは水に濡れても使用できるサンドペーパーで、番手(数字)が高いほど目が細かくなっており、フロントフォークの錆取りには1,000番程度、仕上げ用に1,500番~2,000番程度のペーパーを揃えておきましょう。
耐水ペーパーを水に付け(軽く浸し)、錆を磨いて落としていきますが、フロントフォークの縦方向ではなく、横方向に磨くようにします。
最初は目の荒い1,000番のペーパーを使用し、錆が落ちていくにつれ、目の細かな1,500~2,000番のペーパーで仕上げていきましょう。
手順4.コンパウンドを使う
耐水ペーパーでの錆落としや磨き上げて錆が落ちたら、コンパウンドを使ってさらに表面を滑らかにしていきます。
コンパウンドを使って磨き、ウエスなどで拭き取って指で滑らかになっているかどうかを確認していきましょう。
滑らかになっていくごとに表面に鏡面のような艶と光が出てくるので、見た目からも分かります。
手順5.防錆処置を行う
コンパウンドでフロントフォークの表面を滑らかに仕上げたら、防錆効果のあるシリコンスプレーを吹きかけていきます。
この時、オイルシールにシリコンスプレーがかかるとゴムの硬化につながるなど影響が出るので、オイルシールにかからないよう注意が必要です。
シリコンスプレーを吹きかけ、ウエスなどでしっかり拭き取って錆取り作業も終了ですが、防錆作業を行っておけば、その後のメンテナンスも楽になります。
フロントフォークの錆びを落とすときの注意点
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フロントフォークの錆落としは、以下の点に注意しながら作業を進めましょう。
- オイルシールまで処置しない
- 横向きに少しずつ処置していく
これらの点に注意して錆落としを行わないと、場合によってはフロントフォークにまでダメージを与え、最悪オーバーホールが必要になることがあります。
オイルシールまで処置しない
オイルシールは、フロントフォークのインナー内に充填されている、フロントフォークオイルを密閉する役割があります。
オイルシールがダメージを受けるとオイル漏れを起こす原因につながるので、錆落とし作業の前に、オイルシールにマスキングするなどして保護しておきましょう。
フロントフォークはサスペンションの役割を果たしていますが、オイル漏れが進むと衝撃の吸収が悪くなったり、走行中にフラフラしやすくなったりして危険です。
横向きに少しずつ処置していく
フロントフォークのインナーが削れると、オイルシールとの密着が悪くなり、オイル漏れを引き起こすことがあります。
そのため、縦方向(垂直方向)に研磨をかけるのではなく、横方向(水平方向)を往復するように研磨していきましょう。
フロントフォークの錆びを防止する方法
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フロントフォークに錆が発生しないよう防止する方法には、次の4つがあります。
- 雨天時の走行後は濡れたままにしない
- バイクカバーを掛ける
- 屋内に駐車・保管する
- 定期的に洗車を行う
これらを普段から意識することで錆の発生を抑えられますし、錆が発生したとしても比較的軽微なもので済みます。
方法1.雨天時の走行後は濡れたままにしない
錆は水分と酸素が金属の表面に化合することで発生しますので、雨天時など水滴がついたままの状態を避ければ錆の発生を抑えられます。
雨天走行後は、できるだけバイクに残った水滴を拭き上げるなどし、早めに洗車をして水滴と一緒に付着したホコリや泥などを洗い流しましょう。
方法2.バイクカバーを掛ける
フロントフォークの錆は水分のほかにも、ホコリや油分も発生の原因となるので、駐車時はバイクカバーを掛け、外気やホコリなどをシャットアウトするとよいでしょう。
ただし、長期間バイクに乗らない場合は地面より巻き上がってくる湿気を、カバーがバイクの中に留めてしまい、錆の発生要因となります。
長期間バイクを動かさない場合は、たまにカバーを外して空気を入れ替えるか、湿気や水に強いカバーを使用するのがおすすめです。
方法3.屋内に駐車・保管する
雨風をしのげる屋内でバイクを保管することで、屋外保管よりもフロントフォークへの錆が抑えられます。
屋内でさらにバイクカバーを掛けて駐車や保管すれば、よりバイクをホコリなど汚れから守ってくれ、防錆効果が高いです。
方法4.定期的に洗車を行う
屋外にバイクを駐車している場合はもちろん、屋内やカバーを掛けての駐車・保管でも地面から巻き上げたホコリなどでバイクが汚れ、錆の発生を生みますので、定期的に洗車を行うと錆の発生を抑えられます。
特に雨天時の走行や、天気に関係なく海近くを走行した場合、または海近くで駐車した場合は、水や潮風に含まれる塩分で錆が発生しやすいです。
それらの環境下でバイクに乗ったら、できるだけ早めに洗車を行い、防錆処置も施しておきましょう。
フロントフォークの錆び取りに関するFAQ
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バイクのフロントフォークの錆について「よくある質問や疑問」と「回答」についてまとめてあります。
フロントフォークの錆を落とそうと思っている方や、錆の発生を抑えたい方は、ぜひこちらの項を参考にしてみてください。
フロントフォークの点錆や小さい錆はピカールで落ちる?
ピカールは主にステンレスや真ちゅうを磨き上げる際に使用し、フロントフォークの錆には対応していません。
フロントフォークの錆を落とすには、ポンスタなどのグラスウールか目の細かい真鍮ブラシを使い、耐水ペーパーやコンパウンドで仕上げていくのがおすすめです。
フロントフォークの錆穴や補修にアロンアルファが使えるの?
フロントフォークの錆によって表面がボコボコになっている場合、錆を落とすと錆の中心部のメッキが完全に剥がれ落ち、凹んでいるようになっていることがあります。
その際にアロンアファを使って表面の凹みを埋め、磨き上げると穴を塞げますが、アロンアルファよりも金属やメッキに対応したボンドの方が親和性や耐久性もよいです。
ただし、あくまでも応急処置なので、処置した部分に再び凹みが発生していないか、乗る前に必ず点検を行った上で走行しましょう。
フロントフォークの再メッキはいくらかかる?
フロントフォークの再メッキの料金相場は、正立式で1本あたり2万円前後から、倒立式では1本あたり25,000円前後からです。
再メッキに加え、オーバーホールも依頼した場合は、正立式で計32,000円前後(1本あたり)から、倒立式で36,000円前後から(1本あたり)となっています。
再メッキはほとんどの修理工場では行えないので、フロントフォークを分解し、メッキ加工を別業者に依頼しているため、分解工賃と輸送コストが発生しやや高額です。
タイヤやフェンダーを外さずに磨く方法を教えて欲しい
耐水ペーパーで磨き上げていけば、タイヤやフェンダーを外さなくても錆を磨き落としていけますが、手の入る範囲での作業しかできず、作業効率もあまりよくありません。
タイヤやフェンダーを外さずに耐水ペーパーで磨いていく場合は、最初は800番ほどの目の荒いペーパーから磨き始め、1,000番→1,200番・・・というように、除々に目の細かいペーパーに変えて磨いていきます。
クロームメッキ部分の錆びはフロントフォークと同じように落としていいの?
クロームメッキ部の錆は、表面のホコリや汚れを落とした後、メッキに対応した錆取り剤を塗布して磨き上げていきます。
ウエスやクロスなどに薬剤を塗布し、優しく磨き上げるようにしてメッキ部の錆を落としていきますが、落ちた錆がウエスなどに付くと、錆がメッキを傷つけてしまいます。
錆がウエスなどに付着したら、メッキ部分に傷が付くのを防ぐために、新しいウケスやクロスに変えて拭き上げていきましょう。
まとめ
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バイクのフロントフォークの錆について、錆の発生原因や処置方法を解説してきました。
フロントフォークの錆は、最初はクロームメッキに現れる点錆が多いですが、点錆のまま放置しておくとやがては大きな赤錆へと発展します。
赤錆を放置するとオイルシールを傷つけたり、ときにオイル漏れを起こしたりすることがあり、オイル漏れが起きるとフロントフォークのオーバーホールが必要になるので、点錆を見つけたら早めに錆を落としましょう。