バイクの慣らし運転は必要?各主要メーカーの考え方と慣らし運転後のやるべきこと

バイクの慣らし運転は必要?各主要メーカーの考え方と慣らし運転後のやるべきこと

バイクの慣らし運転とは

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新車でバイクを購入した際、「慣らし運転が必要」だと言われますが、慣らし運転とは新車に当たりを付けることを指します。

人や販売店によっては、「慣らし運転は必要ない」と言われることもありますが、せっかく購入した新車のコンディションを整え、長く乗っていきたいのなら、慣らし運転を行うのがおすすめです。

車種によっては高回転まで回せないことも

新車で購入したバイクは、車種によってはある程度の距離を走行(1,000Km程度が多い)するまで、エンジンの回転数に制限がかかることもあります。

車種によっては慣らし運転時の回転数が制限され、本来なら9,000rpmからレブリミットになっているバイクでも、慣らしが終わるまで7,000rpm以上は回せないなど、回転数に制限がかかることも。

BMWやKTMなどでは、新車時に慣らし運転用に粘度が低めのオイルが使用され、慣らしが終わる1,000kmの初回点検時に、本来の高粘度のオイルに交換されるケースが多いです。

粘度の低いオイルは高回転を回すには向いていないため、オイルの面から見ても、慣らし運転時からガンガン高回転を回すのは、エンジンにとってあまり良いことではありません。

バイクの慣らし運転の目的

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バイクの慣らし運転の目的は、主に次の通りです。

1. 各部のネジの初期緩みを確認する
2. タイヤの皮むき
3. エンジンパーツ同士を馴染ませる
4. ライダー自身もバイクの特性に慣れる

順番に解説していきます。

目的①:各部のネジの初期緩みを確認する

新車バイクは、走行時の振動によってネジやボルトに初期緩みが起きることが稀(まれ)にあります。

新車のバイクは工場でしっかりと検査をし、検査に合格したら初めて出荷されますが、走行後の緩みは検査では確認できません。

そのため、慣らし運転を行いながら、各部のネジやボルトなどに緩みが起きていないかをユーザー側で確認するか、購入店などの初期点検で確認してもらう必要があります。

目的②:タイヤの皮むき

新品時のタイヤは滑りやすく、本来のグリップ力も発揮されませんので、皮むきが必要です。

皮むきとは、タイヤ表面に付着している離型剤を削ぎ落とすことで、慣らし運転の他にも、中性洗剤を柔らかめのブラシでこすり洗い流すことでも皮むきできます。

離型剤はタイヤ生産時に型から外れやすくするために使用され、ほかにもタイヤを空気から遮断し寿命を延ばす効果もあり、離型剤が残ったままだと、タイヤ本来の性能が発揮されません。

目的③:エンジンパーツ同士を馴染ませる

慣らし運転の大切な目的として、エンジンパーツ同士をしっかりと馴染ませる必要があります。

新車状態のバイクは、エンジン内部やミッションなど、金属の表面に微細な凹凸(バリと呼びます)が残っていることがあり、バリを取ってスムーズに動くようにする(当たりを付ける)のが慣らし運転の主な目的です。

バリが残っていた場合、いきなりエンジンを高回転まで回すと、たとえ小さなバリであったとしてもバリと接する面にダメージを与えることも。

慣らし運転を意識して、低回転からエンジン回転数を徐々に高めていくことで、ダメージを与えない程度にバリを削り落とすことができ、パーツ同士もしっかり馴染みやすくなります。

目的④:ライダー自身もバイクの特性に慣れる

バイクに関する慣らしの他にも、ライダー自身もバイクの特性に慣れていく必要があります。

バイクにはそれぞれシートの高さやハンドルの幅、ステップの位置などが異なり、アクセルの開閉具合やエンジンのレスポンスなど、操作に関する部分もバイクによって様々です。

バイクの特性を掴み、ライダーがバイクそのものに慣れていくというのも、慣らし運転の目的の一つになります。

一般的なバイクの慣らし運転の方法

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バイクの慣らし運転をしていくにあたり、一般的な方法を紹介していきます。
慣らし運転のポイントは次の通りです。

1. 納車後1か月以内に走行距離1,000kmを目安に走る
2. 「急」のつく行動は控える
3. 時間をかけて各部をなじませる
4. 短距離走行は避けて各ギアをまんべんなく使う
5. 段階的に回転数や加速感を上げていく

順番に見ていきましょう。

ポイント①:納車後1か月以内に走行距離1,000kmを目安に走る

慣らし運転を行う距離は、納車から1ヶ月を目安に、1,000Km走行までというのが一般的です。
バイクの新車は、納車から1ヶ月後または1,000Km走行のどちらかに達したら、初回点検を受けることが推奨されています。

初回点検ではオイル交換の他に、各部のネジやボルトが緩んでいないか、エンジンや駆動系などに問題が生じていないかなどが点検され、初回点検を終えると慣らし運転も終了とするというのが一般的です。

ポイント②:「急」のつく行動は控える

慣らし運転の期間中は、急発進・急加速・急旋回など「急」の付く行動は控えましょう。
理由は、急激な変化を行うことでバイクに高負荷がかかり、綺麗に当たりを付けられなくなる可能性があるためです。

慣らし運転では、緊急の場合を除き、急の付く操作を行わなくてもよい走行を心がけましょう。

ポイント③:時間をかけて各部をなじませる

慣らし運転はエンジンのみならず、サスペンションやホイール・タイヤ、スイングアームなどバイク全体に当たりを付け、馴染ませていきます。

しっかりと当たりを付けていくためには、じっくり時間をかけて馴染ませていく必要があるため、慣らし期間中は焦らず、優しい操作を心がけながら走行しましょう。

ポイント④:短距離走行は避けて各ギアをまんべんなく使う

エンジンは指定の回転数以下で収まるようにしながら、各ギアをまんべんなく使って走行しますが、大型車の場合は街乗りで最高ギアまで入れるのは厳しいので、高速道路を活用するとよいでしょう。

各ギアをまんべんなく使うのと同時に、各ギアにガタツキや、大きな振動が出てこないかも確認しながら走行します。

慣らし運転時の回転数は、大抵の場合バイクの説明書に記載されていますので、記載された回転数を上限に走行しますが、シフトダウンの際など瞬間的に指定の回転数を超えても大丈夫です。

また、慣らし運転ではエンジンの温まりと冷えによって各部が馴染んでいきますので、エンジンが温まらないような短距離走行(20Km未満)の繰り返しは避けるようにしましょう。

ポイント⑤:段階的に回転数や加速感を上げていく

エンジン回転数やアクセルの開け具合を段階的に上げていくことで、よりスムーズな慣らし運転になります。

例えば、納車から100kmまでは3,000rpmまで、100Km超~500Kmまでは4,000rpmまでというように、慣らし運転で指定された回転数まで、走行距離で区切りながら徐々に高めていく形です。

スロットルの開け方もやんわり開けることから始め、急加速にならない程度に走行距離によって、徐々に開け方も素早く行っていきます。

4大バイクメーカーの慣らし運転の考え方と推奨値について

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国産4大メーカーの慣らし運転の考え方はどのようになっているのでしょうか。メーカーごとに、提示されている慣らし運転について紹介していきます。

ホンダ

ホンダの慣らし運転に関する見解は、部品の精度が向上していることを理由に、500Kmまでは控えめな走行を行うのを推奨するという程度に留めています。

控えめな走行とは急加速や急減速を避け、急ブレーキや急減速など「急」の付く走行を行わないということです。

慣らし運転をしなくても問題ありませんが、慣らし運転をすることでバイクの性能をより良い状態に保てる、というのがホンダの見解になっています。

カワサキ

カワサキでは、400cc以下と400cc以上で慣らし運転の基準が異なり、以下の通りです。す。
また、Ninja -ZX25Rのみ採用されている基準があります。

399ccまで
走行距離 エンジン回転数
0~200km 4,000rpm
200~350km 6,000rpm
350~1,000km 控えめな運転

400cc以上
走行距離 エンジン回転数
0~350km 4,000rpm
350~600km 6,000rpm
600~1,000km 控えめな運転

Ninja ZX-25R
走行距離 エンジン回転数
0~200km 6,000rpm
200~350km 8,000rpm
350~1,000km 控えめな運転

全ての車種に共通した事項として、「必要に応じて規定された回転数を超えても問題なし」という点と、「不必要な空ぶかしや急加速、急減速は控える」ということも推奨されています。
参照元:https://www.kawasaki-motors.com/after-service/running_in/

ヤマハ

ヤマハでは、納車から1ヶ月または1,000Kmの走行時の初回点検までは、慣らし運転を行ってくださいとしています。

エンジン回転数は車種によって異なり、取扱説明書に記載されている回転数を基準に慣らし運転を行いましょう。また、「不要な空ぶかしや急加速、急減速は行わないでください」とあります。
参照元:https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yamaha-motor-life/2016/08/post-508.html

スズキ

スズキの取扱説明書に記載されている慣らし運転は、1,000Kmを走行するまで指定のエンジン回転数以下に走行してくださいとあります。

エンジン回転数は車種によって異なり、慣らし運転をすることで、バイクの寿命が伸びるとも記載されていますので、慣らし運転の有効性をメーカーが後押しする形です。

バイクの慣らし運転後にやるべきことリスト

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多くのバイクメーカーでは、納車後1ヶ月または1,000Kmに達した時に行う初回点検まで、慣らし運転を行うのが推奨となっています。

慣らし運転後に行うべきことは、以下の通りです。

• オイル交換
• 初回点検
• 車体を綺麗にする
• エンジン回転数の上限引き上げ

オイル交換

慣らし運転が終わったら、まずはオイル交換をしましょう。
ならし運転中は、金属同士がこすれることでバリなどの金属片が多く出やすく、オイルが汚れやすいので、慣らし運転が終わったらオイル交換が必須です。

初回点検

慣らし運転が終わったら、バイクの購入店やディーラーで初回点検を受けましょう。
初回点検では、エンジンを始め各部が正常に機能しているか、オイル漏れがないかなど様々な項目を点検してくれます。

初回点検にオイル交換が含まれていることもあり、何か問題があれば点検によって見つかるので、慣らし運転が終わったら初回点検を受けましょう。

車体を綺麗にする

慣らし運転が終わる1ヶ月または1,000Km走行を終えると、車体の汚れも目立ってくるでしょう。新車の状態を保つためにも、洗車を行っていない場合は、洗車などで車体を綺麗にしましょう。

車体を綺麗に保つことで傷などが発見しやすくなりますし、自然とバイクの様々な部分を見ることにもなるので、点検もしやすくなります。

エンジン回転数の上限引き上げ

慣らし運転が終わったら、回転数の上限も上げていけますが、その場合もならし運転中のように段階的に上げていくようにしましょう。

慣らしが終わったといって、いきなり全開走行するとバイクに大きな負荷がかかるので、走行距離で区切って1,000rpmずつ上げていくなど、少しずつ上限を高めていくのがおすすめです。

慣らし運転の「失敗」ってどういう状態を指すの?

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慣らし運転が終わっても、やらないほうが良いこと(失敗)があります。

いきなりレッドゾーンまで全開の走行

慣らし運転が終わった直後からアクセル全開にしたり、レッドゾーンまで回転を引っ張ったりするのはNGで、慣らし運転の失敗です。

慣らし運転期間中と同じように、徐々に最高回転数を上げ、バイクへの負荷をできるだけかけないようにしていくのが、慣らし運転後に必要な乗り方になります。

神経質になりすぎて走りを変えられない

慣らし運転が終わっても、神経質になりすぎて慣らし運転の時と同じような乗り方、走り方になってしまうのも慣らし運転の失敗につながります。

低回転域ばかりで走っていると、混合気の不完全燃焼率が上がり、カーボンとなって付着しやすくなったり、回転数が上がりにくいエンジンになったりすることも。

バイクのエンジンはある態度の回転数で回してやることで、エンジン内部にカーボン蓄積するのが防げるので、慣らしが終わったら徐々に高回転に回していくのがおすすめです。

バイクの慣らし運転に関するFAQ

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こちらの項では、バイクの慣らし運転に関する「よくある質問・疑問」とその回答をまとめてあります。

慣らし運転中の方や、これから新車が納車されて慣らし運転をしようと思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

中古車や旧車でも慣らし運転は必要?

中古車や旧車は、走行距離に応じて慣らし運転の必要性が変わります。

旧車ではほぼ見かけないと思いますが、中古車で走行距離が1,000Km未満も場合は、慣らし運転が必要です。

中古車はバイクの状態がピンキリで、中には問題のあるバイクもありますので、乗り始めてから1,000Km程度は慣らし運転のように、バイクの様子を見ながら乗るとよいでしょう。

慣らし運転は1日何キロまで?

慣らし運転に1日何キロまでという指定はありませんが、1日最高でも100Kmを目安にするとよいでしょう。

バイクに当たりが付いていない状態で長距離走行をすると、バイクへの負担も増えやすく、劣化を早めてしまうことも。

走行距離が短すぎてもエンジンが温まらないため、慣らしが進んでいかないので、1日20Km以上100km未満を目安に走行しましょう。

慣らし運転をしないとどうなるの?

慣らし運転を行わないからといって、すぐに大きな問題につながることは少ないですが、エンジンが本来持つ性能を引き出せない、バイクの寿命が短くなる可能性があります。

部品の精度が向上していることで、以前ほど慣らし運転に神経質にならなくてもよくはなっていますが、愛車に長く乗っていきたい場合は、慣らし運転をしておいた方が無難です。

慣らし運転の回転数は?

慣らし運転の回転数は車種によって異なります。

大抵の場合は取扱説明書に慣らし運転の回転数が記載されているので、確認の上指定された回転数を限度に、慣らし運転をしましょう。

具体的な回転数の記載がない車種の場合は、100Kmまでは3,000回転まで、~500Kmまでを4,000回転、~1,000Kmまでは5,000回転が目安です。

慣らし運転の最高速度は?

慣らし運転ではエンジンの回転数が重要で、最高速度は法定速度の範囲内で走行しましょう。

大型バイクなど排気量やパワーの大きな車種では、街乗りでも低回転で法定速度の上限に達してしまうため、高速道路を利用する必要があります。

まとめ

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バイクの慣らし運転について、慣らし運転の目的や手順について解説してきました。

最近のバイクは部品の精度も上がり、昔のバイクほど慣らし運転に神経質になる必要がありませんが、慣らし運転をすることでバイクの寿命にも影響してきます。

慣らし運転も大切ですが、慣らし運転期間が終わった後も、いきなりレッドゾーンに入れたりしないよう、徐々に回転数を上げていくのが重要なポイントです。

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